EU|欧州理事会、ペルフルオロオクタン酸を含む7つの物質の濃度制限を追加・更新する案を採択
2022-12-07

欧州理事会が廃棄物中の「永久化学物質」に対するさらなる制限

 2022年10月24日、欧州理事会は廃棄物中の残留性有機汚染物質の存在の制限値を削減するための規制を正式に採択しました。EUは廃棄物が二次原料として循環される社会において廃棄物中の残留性有機汚染物質に対して新たに濃度限界値を設定することが必要と考え、ペルフルオロオクタン酸を含む7つの物質の濃度制限を追加もしくは更新しました。ここでは、この規制を採択した「背景」と「内容」が記事になっています。

背景:

 残留性有機汚染物質は人間の健康と環境に対して有害な物質で、新製品には使用されなくなる可能性がありますが、防水繊維、家具、プラスチック、電子機器などの一部の消費者製品からの廃棄物にはまだ含まれています。「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)」は、環境中での残留性、生物蓄積性、人や生物への毒性が高く、長距離移動性が懸念されるポリ塩化ビフェニル(PCB)等の残留性有機汚染物質(POPs:Persistent Organic Pollutants)の製造及び使用の廃絶や制限、その意図的でない生成による放出の削減等の規制に関する条約です。EUは、このストックホルム条約という国際的な公約を基準として、今回のリサイクル段階での制限の規制を採択し、POPs条約の締結国等に模範を示した形になります。

内容:

採択された規制「残留性有機汚染物質(POPs)に関する規則(EU)2019/1021の附属書IVおよびVを改正する規則」では以下の内容が記載されています。

第1条:規則(EU)2019/1021を次のように改正する。

(1)第21条a「経過措置の規定」が追加される。

1. 10μg/kgの値は、熱および電力用のバイオマスユニットからの飛灰に適用されるものとする。PCBFを含有する、又は汚染されPCDD/PCDFおよびdl-PCBを含む飛灰について、10μg/kgの値を適用する。付属書IVで規定されている5μg/kgの値は、この規則の発効日から1年後まで適用されるものとする。

2.家庭から排出される灰および煤塵で、ポリ塩化ジベンゾダイオキシン類に汚染されたものには、引き続き15μg/kgを適用する。PCDD/PCDFを含む家庭からの灰および煤塵については、2024年12月31日まで15μg/kgの値が適用される。dl-PCBについては、2025年1月1日から付属書IVで規定する5μg/kgの値を適用する。

(2) 規則(EU)2019/1021附属書IV及びVは、本規則の附属書に従って改正される。

第2条:

欧州委員会は、指令2008/98/ECまたは決定2000/532/ECを改正することが適切であるかどうかを評価するものとする。さらに、欧州委員会は、規則(EU)2019/1021の附属書IVに規定された濃度限度を超える残留性有機汚染物質を含む廃棄物を、有害物質として分類する。適切な場合には、その評価に基づいて、この規則の発効後36か月以内に、指令2008/98/ECを改正する改正案または決定2000/532/EC の改正案、あるいはこれら両方を提出しなければならない。

第3条:

この規制は、欧州連合の官報に掲載されてから20日目に発効され、6か月後に適用される。この規則は、すべての加盟国において直接適用されるものとする。

附属書(要約):

POPsに関するストックホルム条約の下での国際的な公約を達成するために、新しい規則は、POPsに関する規則((EU)2019/1021)の附属書IVにいくつかの物質を追加し、附属書IVおよびVの一部の物質の濃度制限値を更新しています。これら附属書には、以下の物質が記載されています。

  • ペルフルオロオクタン酸(PFOA)およびその塩および関連化合物:防水繊維および消火剤に含まれています。

  • ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE):電気および電子機器、車両、家具に使用されるプラスチックおよび繊維に含まれる難燃剤です。

  • ヘキサブロモシクロドデカン(HBCDD) :一部のプラスチックおよび繊維廃棄物、特に建物の解体によるポリスチレン断熱材に含まれる難燃剤です。

  • 短鎖塩素化パラフィン(SCCP):ゴムコンベヤーベルト、ホース、ケーブル、シールなど、一部のゴムおよびプラスチック廃棄物に含まれる難燃剤です。

  • ポリ塩化ジベンゾ-p-ダイオキシンおよびジベンゾフラン(PCDD / Fs):これらの物質は意図的に生成または材料に添加されていませんが、特定の灰やその他の産業廃棄物に不純物として存在します。

  • ダイオキシン様PCB :ダイオキシンと同様に、これらのPCBは一部の灰や工業用油に不純物として存在する可能性があります。ダイオキシン様PCBの制限は、ダイオキシンの制限とともに提案されています。

  • ペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)およびその塩および関連化合物:繊維、焦げ付き防止調理器具、消火剤に含まれています。2021年6月のストックホルム条約締約国会議によってその生産と使用を制限が決定されたのを受け、この物質を規則に追加することが合意されました。

参考

■ 残留性有機汚染物質(POPs)に関する規則(EU)2019/1021の附属書IVおよびVを改正する規則(PDF版)

■ 6月21日プレスリリース:理事会と議会は、廃棄物中のPOPsの存在の制限値を減らすことに暫定的に合意

 

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転載元:株式会社先読 (URL: https://www.sakiyomi.co.jp/)

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