EU|欧州化学品庁、SVHCリスト(認可物質候補リスト、高懸念物質リスト)に9項目を追加
2023-03-27

9エントリー:BPSやBTBPE、TBBPAなど

 2023年01月17日、EUにおける一般・工業用化学品の基本法令であるREACH規則の附属書XIV、認可対象物質の候補物質のリストという位置づけのいわゆる「候補リスト」に高懸念物質(SVHC)として、新たに9項目を特定する内容が欧州化学品(ECHA)より明らかになりました。当該物質らは2022年秋に意見募集がなされていた内容です。

対象物質:

物質名略称EC No.CAS No.特定理由用途情報
1,1′-[ethane-1,2-diylbisoxy]bis[2,4,6-tribromobenzene]BTBPE253-692-337853-59-1vPvB (Article 57e)難燃剤、建材
2,2′,6,6′-tetrabromo-4,4′-isopropylidenediphenolTBBPA201-236-979-94-7Carcinogenic (Article 57a)難燃剤
4,4′-sulphonyldiphenolBisphenol S; BPS201-250-580-09-1Toxic for reproduction (Article 57c); Endocrine disrupting properties (Article 57(f) – environment); Endocrine disrupting properties (Article 57(f) – human health)感熱紙、モノマー
Barium diboron tetraoxide 237-222-413701-59-2Toxic for reproduction (Article 57c)塗料
Bis(2-ethylhexyl) tetrabromophthalate covering any of the individual isomers and/or combinations thereofTBPH--vPvB (Article 57e)難燃剤、可塑剤、封止材
Isobutyl 4-hydroxybenzoate 224-208-84247-02-3Endocrine disrupting properties (Article 57(f) – human health)    コーティング剤、インク、トナー、塗料
Melamine 203-615-4108-78-1Equivalent level of concern having probable serious effects to human health (Article 57(f) – human health); Equivalent level of concern having probable serious effects to the environment (Article 57(f) – environment)モノマー、コーティング剤、インク等
Perfluoroheptanoic acid and its saltsPFHpA and its salts--Toxic for reproduction (Article 57c); PBT (Article 57d); vPvB (Article 57e); Equivalent level of concern having probable serious effects to human health (Article 57(f) – human health); Equivalent level of concern having probable serious effects to the environment (Article 57(f) – environment)-
reaction mass of 2,2,3,3,5,5,6,6-octafluoro-4-(1,1,1,2,3,3,3-heptafluoropropan-2-yl)morpholine and 2,2,3,3,5,5,6,6-octafluoro-4-(heptafluoropropyl)morpholine 473-390-7-vPvB (Article 57e)機能性液体

高懸念物質(SVHC)とは?

 高懸念物質(Substance of Very High Concern, SVHC)とは、その名の通り、懸念の程度が高い物質ですが、EUの化学物質規制の基幹法令たるREACH規則では、明確にその位置づけ、判断基準、特定プロセス等を規定しています。

1.位置づけ
SVHCの位置づけは、REACH規則附属書XIVに列挙されている認可対象物質の「候補物質」というものです。そのため欧州化学品庁(ECHA)が公表・管理しているSVHCの物質リストは「候補リスト(Candidate List)」として知られています。日本語の表現として混乱しがちですが、候補リストはSVHCを選ぶためのリストではなく、認可対象物質の候補のSVHCリストとなります。

2.判断基準
では、どのような物質がSVHCとして特定されるのでしょうか?単に懸念の程度が高いといっても、様々な有害性があり、それぞれに懸念の程度の問題があります。この点について、REACH規則では次のようにSVHCの特定基準を設けています。下記のいずれかがSVHC特定の公表の際に、特定理由として明らかにされる内容になります。

SVHC提案の対象となるのは以下の条件のいずれか、または複数に該当する物質である。

CLP規則に従って、発がん性区分1Aまたは1Bの分類基準に該当する物質
CLP規則に従って、変異原性区分1Aまたは1Bの分類基準に該当する物質
CLP規則に従って、生殖毒性区分1Aまたは1Bの分類基準に該当する物質
REACH規則附属書XIIIの基準に従い、難分解性、生体内蓄積性および有害化学毒性(PBT)を有する物質
REACH規則附属書XIIIの基準に従い、極めて難分解で生態蓄積性の高い特性(vPvB)を有する物質
内分泌かく乱特性を有するか、難分解性、生体内蓄積性および有害化学毒性(PBT)を有する、もしくは、極めて難分解で生態蓄積性の高い特性を有するような物質(vPvB)であって、(d)または(e)の基準を満たさないが、(a)から(e)に列記した他の物質と同等レベルの懸念を生じさせるような、ヒトまたは環境に対する深刻な影響をもたらすおそれがあるとの科学的証拠があり、かつ第59条に定める手続きに従って個別に特定される物質
(REACH規則第57条「附属書XIVに含まれることとなる物質」より一部引用・仮訳 ※一部省略および略称補足)

3.特定プロセス
SVHCを特定するプロセスもREACH規則で詳細に規定されています。ここでは覚えておくべき点として次のものがあります。

SVHCが特定されるケースには3種類あること

  1.  公開協議でコメントがなく、そのECHAがウェブサイト上で公表するケース

  2.  公開協議でコメントがあり、専門委員会の協議で全会一致となり、ECHAがウェブサイト上で公表するケース

  3.  公開協議でコメントがあり、専門委員会の協議で全会一致とならず、欧州理事会および議会で検証した後、法令文書である「決定」の形で公布されるケース

 日本で知られている情報に「SVHCは年2回公表される」という内容をたまに見かけますが、上記3つのケースがあるため、SVHCの公表・特定は年2回とは限りません。これは、実際に過去にどのくらいの頻度で、どの時期にSVHCが特定されていたのかを検証すると明らかになります。コンプライアンス対応上、注意しておきたいことは、上記3つのケースでは特定までの所要時間が異なるため、SVHCが特定されるかどうかは、時期を予め特定せず、常に情報をチェックしておく必要があるという点です。

 SVHC特定の元となる情報は、REACH規則の元での登録情報や、CLP規則のもとでの分類情報であること
新たにSVHCを特定する、新たな収載理由を追加するための提案は、欧州委員会の要請を受けたECHAか、各加盟国の所轄当局が行いますが、基本的にその元となる情報源は、REACH規則の元で蓄積された情報や、CLP規則のもとでの有害性分類情報です。勿論、新たな試験結果や文献情報も参考にされますが、特に、CLP規則のもとで運用されている調和分類・表示(CLH)制度の分類結果には注意が必要です。CLHの分類は、欧州委員会、理事会および議会が検討・審議して決定した分類結果であるため、EUでの検討においては、信頼性の高い情報としてみなされます。つまり、ここでの注意喚起はSVHCはREACH規則のもとで敷かれている規制であるとはいえ、その新規特定には、CLP規則のもとでの有害性分類情報も重要であるという点です。CLP規則のもとでの分類情報はC&Lインベントリーで一括管理されています。

高懸念物質(SVHC)に特定されると?

REACH規則の下では、企業は、自社の物質が候補リストに(単体、混合物、成形品のいずれかに)含まれる場合、法的義務を負います。

0.1wt%以上の濃度の候補リスト物質を含む成形品の供給者は、顧客と消費者が安全に使用できるよう十分な情報を提供しなければならない。消費者は、購入する製品に高懸念物質が含まれているかどうか供給者に尋ねる権利があります。要請があった場合、指定期日以内に回答する義務が生じます。

成形品の輸入者と製造者は、成形品が対象物質を含む場合、SVHCリスト収載日から6ヶ月以内にECHAに通知しなければなりません。

リストに掲載された物質を単独または混合して供給する供給者は、安全データシート(SDS)を顧客に提供しなければなりません。

廃棄物枠組み指令の下、企業は、生産する成形品にSVHCが0.1wt%を超える濃度で含まれている場合、ECHAに通知しなければなりません。通知は、ECHAの製品含有化学物質データベース(SCIP)で公開されます。

参考

■ SVHC追加/ECHA

 

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転載元:株式会社先読 (URL: https://www.sakiyomi.co.jp/)

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